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Column

​「”ニッケルハルパ”、”北欧伝統音楽”…

興味はあるけど一体何のこと?どうやって楽しめばいいの?」

そんなあなたの疑問にお答えします。​

知っていると毎日がちょっと豊かになる、pocofikaの解説ミニコラムです。

1.ニッケルハルパとは?

1.ニッケルハルパとは?  

ニッケルハルパ(Nyckelharpa)はスウェーデンの民族楽器です。

その発祥については未だ不明な点も多く、いつ・どこで・誰によって・どのように考案されたのかはわかっていません。最古の例としては、1350年頃に造られたとされるゴットランド島にある教会のレリーフにニッケルハルパらしき楽器が刻まれていますが、”その楽器をニッケルハルパと呼んでいいのか?””レリーフに刻まれているからといって当時スウェーデンで演奏されていたといえるのか?”などなど、学術的な議論の決着はついていません。

しかし一般的には、ウップランド地方を中心に17世紀頃までには広まっていたと考えられています。なぜなら、当時のウップランド地方の複数の教会の壁画にニッケルハルパがたくさん描かれているから。

実際、ニッケルハルパ人口は今でもウップランドに集中しています。その一方で他の地方出身のミュージシャンが自分の出身地の曲をニッケルハルパで演奏する機会も増えており、楽器の可能性は更なる広がりを見せています!

2.ポルスカとは?

2.ポルスカとは?  ​

ポルスカ(polska)というのは3拍子の踊りであり、その踊りの際に演奏されている曲のことも指しています。このポルスカ、地方によって様々な種類があり非常に奥が深いのです!跳んだりはねたりするポルスカもあれば、優雅に流れるようなポルスカもありますし、その際に演奏される曲もまた踊りとよく合うようになっていて、地方によってそれぞれ異なる装飾音や奏法があります。

ポルスカを演奏する時には多くの場合1拍目と3拍目を足踏みします。曲や演奏者によっては2拍目も踏む時があります。いずれにしても、リズムに乗って楽しむことが大切です。皆さんもぜひポルスカを聴く際には1拍目と3拍目のリズムを感じてみてください!

3.曲名「efter」の意味

​3.曲名「efter」の意味

私達が演奏している曲名に「efter」という単語が頻繁に登場していること、皆さんお気づきでしょうか?

この「efter」というのはスウェーデン語です。英語の「after」にあたります。よく「efter+人名」というように書かれていて、「○○さんが伝えた曲」もしくは「○○さんから教わった曲」という意味になっています。伝統音楽は作曲者が不明な曲が多く、曲のタイトルもないようなものばかり。そのような状況で曲を区別するために、その曲を一番古くに伝えた人物の名前をとって曲の名称としているのです。また、同じメロディやモチーフの曲でも地方や人によって弾き方が少しずつ違っていることも多々あります。そんな時にも、これは誰々のバージョンだ、みたいに言えるとわかりやすいですよね。

「曲の種類(ポルスカpolskaとかワルツvalsとか)+efter+人名」で呼ばれている曲は、「○○さんが伝えた(弾いていた)曲なんだなと捉えると、曲への親近感が増しますよね!

また、efterの他にも「av」「från」という言葉もよく登場します。「av」は英語の「of」にあたり、「av+人名」で作曲者を表しています。一方「från」は英語の「from」にあたり、「från+地名」で「~というところの曲」という意味になります。

​普段なじみのない言葉ですが、少し知っているだけで曲の見方が全然違います。皆さんにとって、北欧音楽がもっと身近に感じられますように。

(1) 地方による違い
4. ポルスカの種類

​4.ポルスカの種類

(1)  地方による違い​

ポルスカには様々な種類があります。

例えば、地方による違い。これはダンスと曲の奏法、両方に当てはまる違いであり、ダンスも奏法もお互いを補完し合うような特徴になっています。ポルスカが3拍子であることや、ダンスの基本的なステップ自体は変わらないのですが、ステップを踏む際の足の運び方などの違いがあり(跳ねるようなのか、そっと踏み出すのか、水たまりを飛び越えるようにすっと飛び越えるのか)、そして演奏する人はそのダンスが踊りやすいような装飾音のつけ方や音の出し方・伸ばし方をします。それぞれの地方の曲にはやはりその地方独特の演奏の仕方や踊り方があり、それを深く知り再現するのはとても楽しいことです。一方で、「このポルスカはこの地方のものだからこうでなければならない」と相手の演奏やダンスに口を出すのは野暮なことでもあります。ダンスも音楽もお互いを思いやる気持ちが大切であり、お互いが楽しむためのものだからです。

このようなポルスカには例えばBoda(ボーダ)地方のBodapolskaや、Uppland(ウップランド)地方のBondpolska(ボンド=農民のポルスカ)などがあります。

 

ただし一部のポルスカは同じ名称でも地方によって別の種類のダンスを示すものとして使われていたり、そもそもそのダンスや曲の定義・解釈が議論の的になっていたりして、少し扱いにくいものもあります。

そのため、ダンスや奏法の種類としてではなく、ただ純粋に曲のメロディのもつリズムを音楽的に区別する方法があります。それがSextondelspolskaÅttondelspolskaTriolpolskaといった定義です。

(2) Underdelningの違い

(2)  Sextondelspolska、Åttondelspolska、Triolpolska​について

SextondelspolskaÅttondelspolskaTriolpolskaという定義を考える際に重要になるのがUnderdelningという考え方です。英語に直訳するとUnderdivision(分割)であり、ここでは「1拍をいくつに分割できるか?」という意味で使われる単語です。

 

Sextondelspolska(16分音符ポルスカ)はその名の通り1拍を16分音符で分けられるリズムのもの。言い方を変えれば1拍を4つ(2つ)に分けられるもので、タカタカ・タカタカ…と均等にリズムが腑分けできる曲です。Musicのページに音源をあげている、Polska efter Shedinなどはこちらのタイプです。

 

「Åttondelspolska(8分音符ポルスカ)はじゃあ8分音符で分けられるポルスカ?」と思ってしまうところですが、違うのです!ここがややこしいのですが、Åttondelspolskaと呼ばれる曲のunderdelningは3つで、3連符の最初の2つの音がスラ―で繋がっているのです。タータ・タータという揺れるようなリズムを持っており、付点8分音符の演奏とはリズムが異なります。オルビフースポルスカやティエルプスポルスカはこちらのタイプです。

Åttondelspolskaという名前がとてもややこしいのですが、一般的には「このタイプのポルスカも楽譜で書く際には3連符ではなく、付点8分音符で簡略化して書いてしまうから」と言われています。また、このタイプのポルスカを昔採譜した際には、付点すらつけずに8分音符のみで記録されているものも多いです。そもそも楽譜に重点を置かない民族音楽ならではの、楽譜上の音と実際の演奏との相違がみてとれます。

更にもう一つTriolpolska(3連符ポルスカ)という定義もあります。こちらはunderdelning自体はÅttondelspolskaと同じ3つです。Åttondelspolskaと違うのは、Triolpolskaの方は最初の2音をスラ―で繋げない3連符のメロディがとりわけ目立つということ。つまり名前の通り3連符のポルスカです。

 

一部のダンスの種類・名称とそれに対応する曲・奏法というのは人によって解釈が異なる一方、Sextondelspolska / Åttondelspolska / Triolpolskaという定義はメロディが持っているリズムに基づいたものなので、基本的には人による解釈の違いなどはありません(同じメロディを共有している限りは)。そのため、曲のリズムを説明したい時にはこの言い方がとても便利です。例えば「○○地方のポルスカはSextondelspolskaなことが多いよね」とか、「××地方のポルスカと○○地方のポルスカは、ダンスはちょっと違うんだけど弾き方次第でどっちの曲でもお互いのダンスが踊れるね。両方ともSextondelspolskaだからだね」といった感じで使うことができます!こんな会話をしてみると、なんだか通な感じがしますね。

奥が深く楽しいポルスカの世界に、少しだけ足を踏み込んでみてはいかがでしょうか。

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